こんにちは。
いなだ歯科クリニックです。
今回は睡眠時無呼吸症について、特徴やリスク、治療方法などを歯科の観点からお話いたします。
■睡眠時無呼吸症とは
睡眠時無呼吸症=睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、寝ている最中に何度も呼吸が浅くなったり止まったりして体内が低酸素状態になる病気です。
医学的な判断基準として、10秒以上息が止まる状態を無呼吸といいます。
睡眠中に平均して1時間に5回以上、この無呼吸が見られる場合は睡眠時無呼吸症に該当すると診断されます。
日本国内において睡眠時無呼吸症の患者数はおよそ500万人と推定されています。
しかし、適切な治療を受けている人は、そのうちの1割程度しかいないとされています。
睡眠時無呼吸症は発生の仕方によって分類されます。
①閉塞型:鼻や口から声帯など、肺の入り口に至る場所の空気の通り道が細くなるために発症する
②中枢型:呼吸を調整するための脳の働きが低下することで発症する
③混合型:①と②の両方が関係して発症する
原因は発生の仕方によって異なりますが、閉塞型が大体の割合を占めています。
また、睡眠時無呼吸症になりやすい人には下記のような特徴があります。
- 肥満体質の方
- 顎の中に舌が収まりきらない方
- 鼻呼吸ができず口呼吸になっている方
- 高齢の方
高齢の方、特に80歳以上の場合、なんと9割が睡眠時無呼吸症という調査結果もあります。
年を重ねることで、少しづつお口の中の筋力が衰えることで、就寝中の気道を確保する事が難しくなり、睡眠時無呼吸が発生しやすい状況となります。
さらに、呼吸がとまり、脳に酸素が行き渡らない状態が増えることによって、認知機能障害や認知症にも悪影響を与えている可能性があるとも言われています。
睡眠時無呼吸症は体型に関わらず、口腔内の舌の状態や筋力等も関係しています。
そのため、若い方や健康な方であっても、睡眠時無呼吸症になるリスクは十分にあるのです。
■睡眠時無呼吸症の主な症状やリスク
【症状】
✔️いびきがうるさいと言われる
✔️日中眠気に襲われる
✔️起床時に倦怠感や頭痛がする
✔️就寝中に目が覚める
✔️就寝中に息苦しくなる
【リスク】
睡眠時に眠りが浅くなったり呼吸が止まるため、眠りの質が落ちてしまうことから日中の倦怠感や眠気などの症状があらわれます。
ひどい場合社会生活に支障をきたすこともあります。
さらに、呼吸が浅くなることで、低酸素状態になり、心臓や脳、血管に負荷がかかり、狭心症や脳卒中、心筋梗塞などの合併症を来たし、命の危険性も高まってしまいます。
そのほか、高血圧症や糖尿病などの全身疾患への悪影響もあると言われています。
放置すると重篤な病気になるリスクが高いため、周囲からいびきを指摘されたり、睡眠時に何度も目が覚めるという方は、一度睡眠時無呼吸検査を受診することをおすすめいたします。
■睡眠時無呼吸の治療
一見、睡眠時無呼吸症と歯科医院は関わりが浅いと感じるかもしれませんが、睡眠時無呼吸症は歯科医院で治療を受けることでも改善を促すことが可能です。
睡眠時無呼吸症の治療には主に耳鼻科や呼吸器内科を受診し、CPAPという器械を使用するCPAP療法があります。
また、歯科の分野では、上の歯用と下の歯用のマウスピースを組み合わせた装置、「口腔内装置(OA)」を用いたものがあります。
CPAP療法では鼻にマスクを装着し、小型の器械を用いて一定の圧力をかけることで空気を送り込み、気道を広げます。
一般的に重度の方に用いられる治療です。軽度・中等度の場合は、保険適応での治療を受ける事ができません。もし自費での使用となると、毎月15,000円程度のレンタル料金が発生します。
就寝時枕元に装置を置いて使用しますが、多少動作音がするため、神経質な方ですと睡眠の妨げになることもあります。
また、装置の重量もあり、電源も確保しなければならないため、使用場所を選ぶなどの弱点もあります。
一方口腔内装置(OA)は、就寝時にマウスピースを装着することで、下顎を前方へ牽引し気道を確保することができます。
装着時の不快感も少なく、体への負担もほとんどありません。また、CPAPとは異なり小さく軽いため持ち運びやすく、電源も不要のため、外出先での利用でも利便性高いです。
睡眠時無呼吸症候群は、軽度の場合でも「呼吸が止まっている」ため、脳や心臓といった臓器にダメージが蓄積されていきます。
重症化を防ぐ意味でも、マウスピースを使用した早期からの治療をおすすめいたします。
当院では、OAを用いた治療を行っております。
呼吸が正常になるように作られたマウスピースを装着することで、下顎が引き上げられ、下がっていた舌も引き上げられるようになります。
狭くなっていた気道が広がり、正常な呼吸を促せるので改善に繋がります。
■まとめ
歯科医院で睡眠時無呼吸症改善用のマウスピースで治療をする場合、保険診療になるケースと自由診療になるケースがあります。
また、どちらの方がより効果的なのかも異なります。
最終的には歯科医師の判断によるため、まずはお気軽にご相談ください。