〜口の健康が眠りの質を左右する?〜
「歯が痛くなったときだけ歯医者に行く」という方は少なくありません。
実は歯や口の健康は、私たちの睡眠の質と密接に関わっているのです。
虫歯や歯周病といった一般的なトラブルだけでなく、
睡眠時無呼吸症候群・歯ぎしり・食いしばり・顎関節症など、
夜間の眠りに影響を与える症状の多くが、実は歯科領域と関係しています。
今回は、「睡眠の質」を守るために知っておきたい、歯科と睡眠のつながりについてご紹介します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)と歯科の役割
眠っている間に呼吸が何度も止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」。
特に多いのが、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」で、これは喉の筋肉や舌の位置が原因で気道が塞がれることで発生します。
SASの代表的な症状:
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大きないびきをかく
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睡眠中に呼吸が止まる
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夜中に何度も目が覚める
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朝起きても疲労感がある
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日中に強い眠気がある
こうした症状がある場合は、医科での検査・診断が第一ですが、実は歯科も治療に関わることができるのです。
スリープスプリント(口腔内装置)
歯科が担う役割のひとつが、「スリープスプリント(口腔内装置)」の作製です。
これは就寝中に装着するマウスピースのような装置で、下顎を前方に誘導することで気道を確保し、呼吸がスムーズになるようサポートします。
特に、軽度から中等度のOSAに対して有効とされており、医科との連携のもとで作製・調整を行います。
CPAPなどの外部装置が適応外の場合や、使用が困難なケースにも有効です。
また、アレルギー性鼻炎などによる鼻詰まりがあると口呼吸になりやすく、無呼吸を悪化させることがあります。そうした場合には、耳鼻科的なアプローチも必要になります。歯科・医科・耳鼻科の連携が、質の高い睡眠の回復には不可欠です。
歯ぎしり・食いしばりと睡眠の関係
無意識のうちに歯を強くこすり合わせたり、噛みしめたりする「歯ぎしり(ブラキシズム)」。
これは睡眠中に起こることが多く、自分では気づきにくいのが特徴です。
歯ぎしりの主な原因:
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精神的ストレス
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噛み合わせの異常
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睡眠の質の低下
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遺伝的要素 など
歯ぎしりによる影響:
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歯がすり減る、ひび割れる
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詰め物・被せ物が取れる
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顎関節への過度な負担
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顔や首の筋肉のこり
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慢性的な頭痛や肩こり
歯科での対策:ナイトガード
歯ぎしりや食いしばりの対策として、歯科では「ナイトガード」というマウスピース型の装置を作製します。
これを就寝時に装着することで、歯と顎へのダメージを軽減し、睡眠中の緊張を和らげる効果も期待できます。
また、歯ぎしりが強い方は睡眠の質そのものが低下している可能性もあります。
ナイトガードの使用と併せて、ストレス管理や睡眠習慣の見直しも大切です。
顎関節症と眠りの質
口を開けるときに顎が痛む、音がする、動かしにくい──それが「顎関節症」の典型的な症状です。
顎関節症の症状があると、痛みや不快感で寝つきが悪くなることがあります。
また、寝ている間に無意識の食いしばりで夜中に痛みで目が覚めるという方もいます。
主な原因:
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歯ぎしり・食いしばり
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噛み合わせの異常
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ストレスや姿勢の悪さ
歯科では、顎関節の負担を軽減するためにマウスピースの作成を行ったり、噛み合わせを調整することで、症状の緩和と睡眠の質向上を目指します。
虫歯や歯周病の痛みも睡眠の妨げに
意外に見落とされがちですが、虫歯や歯周病による痛みも夜間の睡眠を妨げる大きな要因です。
特に夜は交感神経が落ち着き、副交感神経が優位になることで痛みを強く感じやすくなる傾向があります。
「夜になると歯がズキズキして眠れない」という経験がある方も多いのではないでしょうか?
また、痛みで眠れない → ストレスがたまる → 歯ぎしりがひどくなる、という悪循環に陥ることもあります。
睡眠の質を高めるために「口の健康」を見直そう
睡眠の質を守るためには、生活習慣やメンタルケアだけでなく、歯や口の状態にも気を配ることが大切です。
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歯科の定期検診で早期発見・早期治療
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歯ぎしりや食いしばりのチェック
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噛み合わせの調整
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適切なマウスピースの活用
最近では、「睡眠歯科」という分野が注目されており、歯科と睡眠医療が連携することで、質の高い眠りをサポートする取り組みが進んでいます。
まとめ
「睡眠の質が悪い」「朝起きても疲れている」「歯がすり減っている気がする」など、気になる症状があれば、それはお口からのサインかもしれません。
歯科医院では、口腔の健康を通じて睡眠の質を向上させるサポートが可能です。