こんにちは。歯科医師の工藤です。
先日、9月12日に兵庫県たつの市のJA兵庫西揖西支店の会議室で開催された「介護保険事業別研修会」にて、講演の機会をいただきました。
この研修会には、介護に従事されているケアマネジャーさんやヘルパーさんなど、約25名の皆さんが参加されました。
まずはじめに、日本訪問歯科協会の法村氏による概要説明が行われ、その後私がスライドを用いて講演を行いました。
私は「歯医者さんとつながるために~歯科連携はじめの一歩~」をテーマに、歯科医療と介護がどのように連携していけるのか、そのためにどのような準備が必要なのかについてお話しさせていただきました。
皆さんが大変熱心に聞いてくださり、歯科と介護の連携に対する関心の高さを感じました。
私がなぜ「歯科連携」が重要だと考えているのか。
答えは、要介護の方々に元気でお過ごしいただくためです。
要介護の方々が元気に生活を続けられるために、口腔ケアが欠かせません。
歯の健康が保たれることで、噛む力や食べる楽しみが維持され、体力や体重も保持できます。
例えば、歯の調子が良ければ、普通の食事、つまり歯ごたえのある食べ物を楽しむことができますが、歯の状態が悪くなると、刻んだりとろみをつけた嚥下調整食に移行しがちです。これでは、栄養価の高い食事を取ることが難しくなり、その結果、体重が減少し、体力が低下する恐れがあるのです。
さらに、飲み込む力が弱まってくると、誤嚥のリスクも増します。
口の中に溜まった菌を含む唾液が誤って気管に入ってしまうと、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があります。
これは高齢者にとって深刻な問題です。
ですから、口の中の健康を保つこと、そして「何でも食べられる口」を維持することがとても重要です。
そのためには、介護に携わる方々と歯科医師の連携が不可欠です。
そこで、介護に携わる皆さんにお願いしたいこととして、要介護者の口腔内の状態をしっかり観察し、その状態を歯科医師に伝えていただくことが重要だという点を強調しました。
具体的には、どのようにお口の中をチェックすればよいのか、また、気を付けるべきサインについても説明させていただきました。
たとえば、歯や歯茎の状態、口臭、舌苔の有無などは、歯科的な問題の早期発見につながります。
講演後には、何人もの参加者からさまざまな質問をいただき、私自身も非常に学びの多い時間となりました。
ケアマネジャーさんやヘルパーさんたちが、それぞれの現場で抱えている課題や疑問点について具体的な意見交換ができたことは、とても貴重な体験でした。
この研修会が、一人でも多くの在宅要介護者と歯科医療をつなぐ一助となり、食べる喜びや会話を楽しむための支援として広がっていけばと心から願っています。
また、地域全体での連携が進み、より質の高い介護サービスを提供できることを目指して、今後もこのような機会を大切にしていきたいと思います。
最後になりましたが、研修会を運営してくださったJA兵庫西の担当者の皆様、そして熱心にご参加いただいた皆様に、この場を借りて深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。