口腔ケアの大切さを共有するために 〜あっぷるグループホームたつのでの研修会より〜

こんにちは。歯科医師の工藤です。

5月22日と29日の木曜日、たつの市にある「あっぷるグループホームたつの」にて、午後2時より「口腔ケアの必要性」をテーマに研修会を開催させていただきました。

      

この研修会には、ケアマネジャーさんやヘルパーさんをはじめ、介護現場で日々ご利用者さんと関わっておられる約20名の皆様が参加してくださいました。
私からは、口腔ケアがなぜ重要なのか、そして歯科としてどのように支援できるのかを、スライドを使いながら、できるだけわかりやすくお話しさせていただきました。

なぜ「歯科」につなげることが重要なのか?

ご高齢の方々ができるだけ元気に過ごすためには、「食べる力」を維持することがとても大切です。
歯の調子が良ければ、健康な方と同じように歯ごたえのある食べ物を噛むことができ、栄養状態の維持にもつながります。

しかし、歯のトラブルにより咀嚼や嚥下に不安がある場合、どうしても「嚥下調整食」と呼ばれる『刻んだりとろみをつけたり』した食事が必要となります。

このような食事は安全面では有用ですが、栄養価が落ちやすく、エネルギー摂取量が減ってしまう可能性があります。
その結果、体重が減少し、筋力・体力の低下を招くこともあります。
また、飲み込む力(嚥下機能)が衰えることで、唾液に含まれる菌が誤って気道に入ってしまい、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクも高まります。

こうした問題を防ぐためにも、歯科医師と歯科衛生士による専門的なケアと、日常の中での継続的な口腔ケアが不可欠です。ご利用者さん一人ひとりのお口の状態に合わせたケアや口腔リハビリを行うことで、お口の機能の維持・向上を目指します。

ご利用者さんの“お口の状態”の見える化

研修では、現場のスタッフの皆さんに「お口の中を見る力」を高めていただけるよう、具体的な観察ポイントや口腔機能の評価の方法についてもお伝えしました。当院では初診時と改善後に「口腔機能の7項目」に基づいた検査を行い、それぞれの項目がどれほど改善・低下したかを記録しています。

当日は、実際のデータも共有しながら、ご利用者さんの変化の可視化がどれほど大切かを体感していただきました。
数字で見ることで、口腔ケアの効果をより実感していただけたのではないかと思います。

口腔機能は、「食べる・飲み込む・話す」といった直接的な機能だけでなく、身体全体の健康やQOL(生活の質)にも深く関わっています。
例えば、奥歯のかみ合わせがしっかりしていると、姿勢が安定し転倒しにくくなる、はっきり話せることでコミュニケーションが円滑になるなど、生活全般への好影響も期待できます。

研修後にて

参加者の皆さんは非常に熱心に耳を傾けてくださり、講演後にはさっそくご利用者さんと一緒に口腔体操を実践する姿も見受けられました。
何人もの方がそれぞれの立場から質問を寄せてくださり、私自身も現場のリアルな声から多くの学びを得ることができました。

介護と医療の現場が連携し、「食べる」「話す」といった基本的な生活機能を支えていくこと。

それが、要介護高齢者のQOL向上につながると信じています。
このような研修会を通じて、現場の皆さんと想いを共有し、地域全体でご利用者さんの笑顔を守っていく輪が広がって欲しいと願います。

最後に

本研修会の開催にご尽力いただいた「あっぷるグループホームたつの」の皆様、そして参加してくださったすべての皆様に、心より感謝申し上げます。また、日頃より連携いただいている日本訪問歯科協会のご担当者様にも、この場を借りてお礼申し上げます。

これからも、地域に根ざした歯科医療の一環として、こうした活動を続けてまいります。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

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